「音」だけを覚えても読めるようにはなりません。意味がある言葉とセットで読み方を覚えましょう。高学年で読みが苦手な場合は、下学年の音読みを復習することが復活の近道です。下段の言葉を参考に、使う言葉もセットで覚えるようにすると、同音異字の使い分けも意識できるようになります。
4年生以降の教科書や様々な資料集には漢語(音読みの二字熟語)がたくさん使われています。
その教科書や資料集に書いてあることを正確に読めないということは、下学年で習った漢字の読み方を覚えられていないということです。
次々と登場する新しい漢字を書けるように、せっかく一生懸命に練習していたとしても、漢字の読み方に関しては教科書の単元に出てくる言葉さえ読めればよいという感覚に陥っているケースが多々あります。
つまり、他の読み方もマスターしよう、どんな言葉に使われているかを知ろうという学習が学校でも家庭でも少ないのです。
目次
教科書が漢字の「読み」をどのように扱っているのかを、簡単にまとめてお伝えします。
各学年で覚える漢字は文部科学省が決めていますが、読み方に関しては「小学校を卒業するまでに、これだけの読み方を覚えましょう」と一覧で示しているだけです。
つまり、各学年の教科書が提示する読み方は、各教科書会社がどの学年で読み方を提示するかはバラバラです。
そして、1〜2年生で習う漢字はまずは訓読みの言葉として登場させる傾向があります。
1〜2年生の単元はかんたんな文章が多いので、音読みの言葉はあまり登場しないのです。
たとえば、「男」は1年生で習う漢字ですが、とある教科書では1年生の単元に出てくる読み方は「おとこ」だけです。
そして、5年生になってようやく「男女のダン」が出てきて、6年生で「長男のナン」が出てきます。
もちろん、教科書巻末の漢字一覧には小学校で習う全ての読み方が載っています。
しかし、漢字に苦手さを感じ始める3〜4年生以降に新しい読み方が追加されても、全く入らず訓読みでしか読もうとしないケースが多々あります。
加えて、3年生以降に習う漢字は、単元に出てくる1つの言葉の読み方が示された後は、他の読み方が登場しても丁寧に提示してくれません。
つまり、もう読めるようになっているという前提で構成されているのです。
だから、新出漢字を学習するときに小学校で習うすべての読み方をマスターしておかなければならないのです。
ここで、小中学校で学ぶ漢字の読みに関するデータを紹介します。
漢字には訓読みと音読みがありますが、中国から入ってきた音読みは全常用漢字の96.4%にあります。
つまり、ほとんどの漢字に音読みがあるといっても過言ではありません。
一方で、訓読みは日本の言葉に合わせたもので意味もわかりやすいですが、訓読みのない漢字も多いです。
音訓両方習うのは4年生で51%、5年生44%、6年生で37%と次第に減っていきます。
それに反して増えてくるのが、音読みだけを習う漢字です。5年生以降は学年で習う半分を越える漢字数が、音読みしか習いません。
高学年になって急激に増える音読みしかない漢字に子どもたちは一気に混乱します。
そこに、低学年で習った漢字の音読みが加わると、さらに混乱を助長します。
なぜなら、音読みは同音がとても多く、カ行とサ行だけで全体の54%を占めています。
タ行とハ行の27%を加えると、全体の81%にもなります。
つまり、同音だけでなく、「コ」と「コウ」、「シャ」や「シュ」など似た音をもつ漢字が多いので、混乱してしまうのです。
すでに漢字に苦手意識を持っている場合は、なおさら覚えようとする意欲は持ちにくいです。
しかし、救いがあります。
音読みがある漢字の90%は、音読みが1つしかないのです。
その1つだけを覚えれば、その漢字を使う漢語はほとんど読めます。
残る10%の漢字には音読みが2つありますが、一方の読み方をする言葉は少ないので、さほど気にする必要はないと言ってよいでしょう。
ちなみに、音読みが3つある常用漢字は2年生のときに習う「合・読・分」の3つだけです。
読み方の種類が多いのは訓読みですが、訓読みは送りがながあるので意外と簡単に読めてしまいます。
以上のデータに基づいて、ミチムラ式では漢字カードのウラ面で「読み方」を確実に学べるように、次のような対策を取っています。
新出漢字を学習するときに、音読み・訓読みをセットで覚える。
絶対に覚えてほしい読み方は、ほとんどが音読み1つと訓読み1つです。低学年ではその他の読み方をできれば覚えてほしいですが、無理しなくてもいいです。しかし、高学年になっていれば、どれも覚えなければいけない読み方です。
音読みには同音が多いので、読み方だけを単体で覚えてもどの漢字を示すのかが非常にわかりにくい。
音読みには「この言葉に使う漢字だよ」と熟語を付けて示しています。この熟語は日本人なら誰でも知っていそうなよく使う言葉(NTTの単語親密度データベースにある上位の言葉)の中から、同音異義語を外して「この言葉に使う漢字はこれしかないよ」というものを選んで提示しています。それを「音訓セットの漢字のタイトル」として、漢字カードのウラ面上段に示しています。
新出漢字を学習するときに「音訓セットの漢字のタイトル」をすらすら言えるようにすること。
漢字を見たら、この言葉に使われる漢字で、読み方はこれだと思い浮かべることができる状態にしておくことが大切です。
漢字一字の読み方を「漢字のタイトル」にある熟語の意味と一緒に覚えること。
言葉の意味もわからずに丸暗記して覚えるのはオススメできません。なぜなら、言葉の意味がわからなければ役に立たないからです。さらに、その漢字がどんな言葉に使うかというところまで学習を広げないと、漢字を使えるようになるのも難しいです。そこで、漢字カードのウラ面下段に、音読みとセットになっている熟語はどんな意味をもってどんなふうに使われるのかを短文で示し、その他の単語の親密度の高い言葉をいくつか示しています。また、漢字カードplusや漢字eブックでは、言葉の意味を言葉で説明するのではなく、イメージ写真で意味がパッとわかりやすいように工夫しています。
4年生以上で、漢字の読み方があやふやで自信がなさそうな場合は、下学年に戻って集中的に覚え直しましょう。特に、3年生までの漢字を訓読みでしか読めていないようなら、熟語とセットの音読みを集中して覚えてください。この読み方を習得する作業は地道ですが、将来に向けて絶対に必要な学習です。
漢字カードを使って復習する場合は、「読み方を覚えた漢字(完璧!)」「まだ覚え切れていない漢字(ちょっとあやふや)」「全然読めない漢字(全くダメ)」と3つのカードの山を作って、徹底して練習しましょう。
声に出して覚えるだけなので、書く必要はありません。それほど負担はないはずです。
その後に必要な学習は、「漢字一字を読める」だけに終わらせないで、どんな言葉に使われているのかを知ることです。
漢字カードのウラ面下段の言葉はマストで、「漢字カードプラス」の言葉集や「漢字eブック」のイメージ画像も活用して、多くの言葉に触れる機会を作ることです。
音読み二字熟語の漢語は、高学年で目にする様々な文章に多く使われています。
まずは、それらを音読みで読めることが最低限必要なことです。
高学年なら耳で聞いたことがある言葉やすでに知っている言葉がたくさんあるはずです。
しかし、それが漢字でどう表記されるかに意識が向いていない場合が多いので、「そうか、この漢字を使う言葉なのか!」とインプットし直していくことで、頭に浮かんだ言葉を漢字で書き表せるようになっていきます。